矢野は本当に苦労人だった。なかなか試合に出られない日々、四年連続最下位、ようやくチームが強くなったかと思うと故障しシーズン半ばでリタイア・・・プロ入り十三年目で初めて味わう優勝、そして「日本一の捕手」と言われるまでに、彼はどれだけの苦労を重ねたことか。


ドラゴンズでは中村武志の陰に隠れ、外野手転向の話が度々浮上。タイガース移籍後は四年連続最下位になり、交換要員だった関川や久慈が古巣で活躍する様をどんな気持ちで眺めていたのか。星野政権一年目でようやくチームがAクラス争いをできるようになったかと思えばシーズン半ばに故障してチームも失速。
2003年、タイガース18年ぶりの優勝は、矢野にとってもプロ入り13年目で味わう初めての優勝だった。そこから矢野が「強いチームの正捕手」として過ごしたシーズンは僅か6年。現役20年のうちで、たった6年だ。しかしその間彼が放った輝きは決して忘れられることはない。その間の二度の優勝は、間違いなく「正捕手・矢野」のおかげだから。生え抜きやないけど生え抜きのように応援できたのは、彼と我々ファンが苦労を共にしてきたからやと思います。暗黒時代を知る人間がまた一人グラウンドを去ります。

シーズンの展開によっては引退試合ができないかもしれなので、引退発表のあった今日、これを書いておきます。
ホンマにありがとう。お疲れ様。また指導者としてよろしくお願いします。

球児に引退を連絡した際に「おまえの球を受けられて良かった」と言ったらしい。もうこれ聴いただけで涙が止まらない。