ホンマに映画化されてましたわ・・・。


『ネムルバカ』は原作がめちゃ好きで、もう何回読んだか分からんです。
沙村広明先生の『おひっこし』共々「1巻に纏まったモラトリアム全開の日々からの脱却を図る作品」(ニッチな括り)の二大巨頭だと勝手に思ってますが、いやまさか『ネムルバカ』が実写映画化される日が来るとは・・・。

緩い日常をおくる大学生に嫌でも訪れる社会に出るという現実、あの子はもう将来のことを考えているのに自分はまだ何もやろうとしてすらいねぇという焦り。
一方あの子はあの子で本当に今思っている道で良いのか悩んでいる。
物語の題材として永遠不変のテーマを1冊の漫画で味わえたあの名作が今度は106分の1本の映画で味わえるように。
原作同様、伊藤君の名台詞が出るまでは笑いに溢れる日々が描かれるのに、そこから終盤の怒涛の展開に我々も口開けて観てるしかないのです。

本作品は映像化するにあたって絶対にクリアしなければいけないことがありました。
それは「ネムルバカ」という楽曲を名曲にしなければならないということ。
この壁を見事に乗り越えた作曲編曲の朝日さんと作詞の石黒先生の仕事は未来永劫讃えられるべきでしょう。
最後のライブシーン、もう展開は分かっていると思って油断してたら、この名曲に載せて今更のタイトル表示にグッときて、そしてピートモスの面々のわーっていう表情からのエア演奏で涙腺崩壊。やーこれは素晴らしい演出でした。
平祐奈さんは普段は歌の仕事はあまりしていないようですが、それ故か一生懸命歌ってる感じが鯨井先輩ぽさに繋がったんすかね。この声で歌われるあの歌詞の破壊力たるや。
もっと歌手活動してええんやで。

ひょっとしたら円盤買ってしまうかもしれないくらい、何度も観たくなる映画でした。
『ルックバック』があれだけウケて『これ描いて死ね』がアニメ化される今の世なら、この作品も結構いろんな人にぶっ刺さるのでは?
今モラトリアムにいる人も、かつてモラトリアムにいた人も、みんな泣ける作品やと思います。