有名な野球ツイッタラー、お股ニキさんの初著作です。


最近のトレンドが一通り扱われているので現代野球の状況のおさらいに良いです。
お股ニキさんの考察を読みながら自分のスタンスを改めて認識出来るのも良いです。
そして一番のポイントは終始「バランスを取ることの大切さ」を説いていること。
自分もどうしても極論に振りがちなので気を付けたい。しかし最適バランスを求め続けるのはしんどい。なので極論に振りたくなるんですよね。

用語解説は主観客観入り混じってかなり楽しめます。
予約特典は特に振り切っている感じがあるのでおススメです(今から予約特典もらえるのかどうか知りませんが)。

尚、内容について一点だけツッコミたいところがありました。
一時ツイッターで話題になった「バレンティンのWAR 0.7問題」について触れられていますが、「バレンティンのWAR 0.7は不当に低い」という前提の話の展開はちょっとズレているように感じました。
そもそも激戦区のレフトにおいて、バレンティン程の出場機会でWAR 0.7は「相当な貢献」のハズです。お股ニキさんが著作中で語りたかったことはそういうことではないというのは分かってはいますが、この問題の本質は「なぜ0.7になるのか(WARの精度を更に上げるにはどうすれば良いか)」という点であり、WARの値を比べて誰かと誰かの優劣を比べることではありません。
敢えて比べるとしても、バレンティンに近い出場機会でバレンティンより上のWARを残しているのは筒香だけで、筒香とバレンティンなら筒香かなというのは感覚的には間違っていないと思います。アルモンテ、福留はバレンティンよりWARは上ですが出場機会でバレンティンに及んでおらず、そもそも比較することに意味が無いと考えます。
また、仮定の話で「守備力が高く打力は並程度の、バレンティンよりWARが高い選手を起用すれば、チームの順位はもっと上がるのだろうか」というところで「そうではない」と断じられていますが、ここはおそらく「上がる可能性がある」となると思います。と言うのも、そもそも激戦区レフトにおいて「並の打力」とはすなわち他ポジションと比較すれば「そこそこの打力」となり、更に打力でプラスが望めない状態でバレンティン並のWARを出すということは相当な守備力であることが想像されるためです。

グダグダ書きましたがこのくだりでお股ニキさんに書いていただきたかったのはありがちな「見えない貢献」論や「長所を活かす」采配論ではなく「WARの精度を上げるには」という観点かなぁと。バレンティンの攻撃力を神宮のPFで均す意味や、シフトにより通常捕れる球が捕れないことで守備評価を下げる意味などについて突っ込んでいってもらえたら良かったかなぁと。
ここ以外はだいたい自分と同じスタンスか自分の知らないこと(ジャイロボールの辺は「へぇぇぇ」でした)だったのでどうしてもここが気になってしまいました。

などといろいろ考える発端としても良い内容となっておりますので、野球好きの皆さんには是非おススメします。
そしてまた数年後にその時のトレンドについて、その時でも変わっていないことについて、纏めて出版していただけたらなぁと思います。