アカデミー賞外国語映画賞受賞後に速攻でDVDを購入していたんですが、かれこれ一年近く経ってようやく視聴。もう今年のアカデミー賞のノミネートが発表されちゃってる時期になってますが。


面白かった!もう至るところで語られた作品だと思うので今更あれこれ言うこともないのかもしれませんが。
まず素晴らしいなと思ったのは冒頭の「女の人かと思ったら・・・」や中盤の「おばあちゃんにルーズソックスを履かせてあげる」とか「おじいちゃんにキスマークを付ける」とかのシーンで、こういうテーマの作品でしっかりと「笑い」の要素を入れた滝田監督の勇気というかセンスというか、その辺に感服しました。自分はお葬式自体数えるくらいしか出たことないですし最近の出席が10年前のばーちゃんのお葬式なのであんまり言えることもないのですが、お葬式の場って決して哀しいだけの場ではなくて、久々に親族が揃って「最近どないしてた?」とかおしゃべりしたり、故人の想い出を皆で語らったりして、ちょっと楽しい感じもあるような気がします。先述のシーンは作品を重くしないための演出でもあるのでしょうけれども、結果的にはそういった「楽しい雰囲気」もリアルに演出できたのではないかと。
「ほぼ日」の対談によると納棺師の歴史自体はまだ40年くらいと意外と短かったりするらしく、葬儀屋という仕事もその頃から普及し始めたらしい。それまではお寺さん、つまり仏様が一手に請負ってくれていたものをわざわざ人の手でやろうとしたわけで、しかもそれで金を取る。作中でも出てきますし鈴木みその『銭』の葬儀屋さんの話でも出てきたような気がしますが(手元にその巻が無いので未確認)、「人の死で喰う仕事」というのはやはり偏見の目で見られる。最近は不況の影響でリーズナブルなお葬式なんてのも出てきていて、やはり葬祭はビジネスなわけですが、そんな中でも納棺師の人達はこの僅かな年数でここまでの様式美を築き上げてきたのだと思うと、どれだけ密度の濃い40年なのだろうと感嘆したり。
そしてそんな40年の歴史を山崎努演じる佐々木社長がその存在感で見事に見せてくれていたような気がするし、もっくん演じる大悟の真剣さはこれからまた密度の濃い40年を生み出しそうな気がする。偏見もあるけれども、遺族の人達からは「ありがとう」と言われる。なんだかとても不思議な仕事をしている人間の悲喜交々をお二人はしっかりと見せてくれたのではないでしょうか。
ありゃ、なんだかんだでグダグダ書いちゃった。えーっとあとは久石譲サウンドの破壊力(チェロの音だけで泣ける)とか広末がいちいち可愛すぎる(最初、旦那の仕事を理解できていないところとかも含めて)とか最後の「死と生」の描写がとても印象的で泣けたとかもありますが、長くなったのでこんなところで。