逆境ナイン キャラ名鑑

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不屈 闘志

不屈 闘志
全力高校野球部キャプテン。廃部目前のチームに度胸と勇気を叩き込み 甲子園優勝まで導いた。「根拠のない自信」で自らのみならず部員全員までをも 鼓舞するキャプテンの鑑。割と場の空気に流されやすい一面を持ちつつも、 最終的には逆境へ臨む不屈の闘志を武器に己の意志を貫く辺りはギャグマンガとは 言えやはりかっこいい。ここは彼の残した名台詞からいろいろ話をしていきたい。
「思い出は一生ものだが、決められるのは今だけだっ!!」
圧倒的な強さを見せる日の出商の準決勝の試合を観た全力高校野球部ナインは 決勝を前に完全に怖じ気づいてしまう。そんなナイン(新屋敷)を 鼓舞するために吐いた台詞。 これからの長い人生、夏が来る度に必ず今のことを思い出す。その時に 「腰をぬかして戦う前に逃げた過去」と 「強大な相手に対し果敢に立ち向かった思い出」とどちらを思い出すのがいいか? という選択を不屈はナインに迫る。この畳み掛けるような論理立ての仕方が 不屈闘志の不屈闘志たる所以で、本人はこの試合に当然勝つつもりなんですが、 部員達の説得にはその辺の話はせずに「挑戦することが大事なんだ」とだけ伝えて とりあえず場に引きずり出そうとするのが巧い。
「はっきり言って歴史に名が残る!!」
上の続きで「俺達が甲子園にもし出場して優勝でもしたら」というとこまで一気に 話を飛躍させ、皆に夢を見させる辺りの話術は最早天才的。 「歴史に名が残る」は言い過ぎかもしれないですが、少なくとも高校野球ファンや 地元では語り草にはなるでしょう。
「たかが100点差、形の上でだって勝ちます!!」
気絶している間に100点ビハインドになり、それでもやる気を失わずに マウンドに上がろうとする不屈に対して監督であるサカキバラ・ゴウは 「形の上での勝利以外の何かをもたらすことが出来るハズだ」と言うが、 不屈は首を振ってきっぱりと言い放つ。 俺がこの作品でひょっとしたら一番好きかもしれない台詞。 これくらいのことが言える男になりたい。 この台詞は、「参加することに意義がある」「ベストを尽くせばそれでいい」的発想は 後から付いて来るもので、 「やるからには勝たなければならない」「結果を出さなければいけない」 「勝負をする上ではその気持ちを常に持ち続けなければならない」 という勝負師に必要な心構えが集約されていると思います。かっこいい。
「無理が通れば−!!道理は引っ込む!!」
100点差をひっくり返す気満々の不屈に対して、対戦相手、日の出商のキャプテン 高田は、「無理に決まってる!!」と言い放つ。 不屈は「たしかにそうかもしれん…無理だ!!」と言いながらも、こう言い返す。 『逆境ナイン』中、屈指の名台詞のひとつ。 無理でもなんでもやっちまえば全てをねじ伏せられるという、超強硬論。 使う場面を間違えるとただの悪党になってしまうので注意が必要。 この後に続く「まぐれも10回連続して起こればそれは最早実力と呼ばれる」という話も素晴らしい。
「たしかに蛙は大海を、知らなかったかもしれない。だが、通用しなかったとは言ってない!!大海を知らなかった蛙の中にも、十分大海に通用した奴はいたはずだ!!それが、そんな言葉のトリックにひっかかって、どれだけの才能が潰されてきたことか!!歴史の白いページをおれたちが切り拓いてきているのだ!先人の腰の抜けた言動に惑わされるなっ!!」
甲子園出場を決め、甲子園へやってきた全力ナイン。 宿舎にて、「初出場の俺達でもきっと優勝できる」ということをナインに伝えて 鼓舞する不屈に対して、部長の安藤先生は「井の中の蛙って言葉を知ってる?」と 訊く。それに対して不屈は力強く答える。 ことわざを「先人たちの腰の抜けた言動」と一蹴する心意気がかっこよすぎる。
「おれは今、本気だ!!燃えたぎるほどに!!どうしていいかわからんほどに本気だ!!逆境の力を借りるまでもないっ!!」
記憶喪失になっても甲子園大会決勝の場へとやってきた不屈。 不屈をベンチに置きながらも対戦相手の強力学園と熱戦を繰り広げる全力ナイン達に、校長が 「もしここで負けたら廃部だ」と渇を入れるが、「ふざけるなっ!!おれたちは、そんなことのために 戦っているんじゃぁないっ!!」と言い返す。逆境が来なくても本気で物事に挑むことを覚えた、 不屈闘志。夏休み最終日にならなくても宿題をこなせるようになった小学生同様、それは大きな成長と 言えた。
逆境に屈しない心。それは人生の上でとても大事なことだ。 だが、逆境でなくても、常に本気で人生と向き合えるようになること。それはもっと大事だ。 ハッタリでも暴論でも正論でも、時には自分を見失いそうになりながらも、 キャプテン・不屈闘志はナインを叱咤し引っ張り続けた。その魂は、正にリーダーに相応しい。 (2005/9/6 「漫画・アニメ・ゲームから探るリーダー論」第三回より)