哲の小説評
西尾維新 戯言シリーズ

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クビキリサイクル
クビシメロマンチスト
クビツリハイスクール
サイコロジカル
ヒトクイマジカル

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い8点
絶海の孤島に住む大金持ちの御令嬢が招いた 「科学・絵画・料理・占術・工学」の天才達。 「天才・科学者」玖渚友と、そのお供としてその場に居合わせることになっちゃった 「いーちゃん」(主人公)は、そんな「異常世界」で起きた首無し密室殺人事件を 解決することができるのか!?
犯人は、分かったけど分からなかった…。 話○、キャラ○、推理モノとして△、推理モノとしての話◎(だけど現実的には×)、 て感じで、おもろかったです。無気力なんだけどやる気がないわけでなく、 天才でも秀才でもないが凡人でもないまさに中途半端な主人公がイカス。 その他の「天才」達も面白いキャラでした。主人公と占術師の真姫さんや 七愚人の赤音さんとのやりとりは面白かったです。 最初の2ページとあとがきもおもろかったです。 「天才の定義」は考えると面白いのでよくやります。 それから「人を殺してはいけない理由」もおもろかったです。 「そんなことに理由はない」かっこいいです。
推理モノとしてはコナンレベルに不確定要素が多く、さらに共犯。 あげく動機などは想像すらしなかったシロモノなのでもうどう言っていいのやら。 しかしそれがまた面白かったりもする。が、現実的な話をすると、他人を害する輩が 裁きも受けず生き続けているのはどうかと思う。 ま、戯れ言ですか?(笑

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識6点
鴉の濡れ羽島の事件から二週間後。 京都の街を震撼させる連続通り魔事件の犯人、零崎人識に出会ってしまった 「戯言遣い」いーちゃんが、今度はクラスメイトの連続殺人に巻き込まれてしまう! 人間関係とはこうまで脆く儚いものなのか!?愛憎渦巻く殺人事件を いーちゃんは果たして解決出来るのか!?
痛ぇ。 なんつーか…これはもう、「ミステリー」じゃなくて「ホラー」ですな。 しかも『サイレントヒル』系のベタベタまとわりつくような感じのホラー。 精神的嫌悪感による恐怖。『バイオハザード』で言うなら、「生活感のあるゾンビ」を ぶっ倒さなければいけない時の感覚。吐き気を催す気持ち悪さ。 第八章と終章は、戦慄の連続で、ちょっと泣きそうになるくらい哀しくて、 なんかもう、すげぇとしか思えなくて。こんな話を書く作者の脳味噌は どうなってんだろうと感心して。いーちゃんと零崎の差が「愛(例え歪んでいる としても)」だとするならば、「愛」は「殺人鬼」を創り出さないために必要なモノ なのだが、この物語の「殺人犯」は、「愛」ゆえに人を殺している。 零崎は、私的には『ジョジョ』のDIOや『ナディア』のガーゴイルに連なる 「純然たる悪」のラインに分類される。故に、それは勧善懲悪の悪役であり、 あまり気持ち悪い存在ではない。むしろ物語の妙味で好意すらなくもない (DIOとガーゴイルは大好きやしな(笑)。 犯人は、人間のドス黒い部分を全てさらけ出し、気持ち悪い程に己の「愛」を貫く。 そしてその中間にいる中途半端野郎いーちゃん。全てを薄々勘付いていながら、 話の展開が読めていながら、それでも「保留」し続けたいーちゃん。 にも関わらず、最悪の結末になった時のために保険をかけている、 最低としか言い様がないいーちゃん。反吐が出ます。 犯人を追い詰めて自殺させてしまう金田一少年のようです(笑。 最悪の結末には、ならないように努力して良かったでのはないか? 殺人犯を救ってやる必要はなくても、殺人犯予備軍は救ってやって 良かったんでないかと…。あ、でも、そうか、自分が 殺されたかったかもしれんのか…。痛い話やな…。 この『戯れ言シリーズ』にHAPPY ENDが来るとすれば、友ちゃんといーちゃんが ホンマに結ばれる時なんかなーとオモイマシタ。
まぁ、それなりに分かるだろうとこは分かったけども… 巫女子ちゃんにしか犯行がムリなんだから巫女子ちゃんしか犯人は いないわけですよ。トリック(というほどのものでもなかったが)とかは置いといて、 それしかありえないから。実はもうひとつ「全員自殺」の線も考えてたんですけどね。 しかし相変わらず潤さんの思考には辿り着くことがません。ていうかムリ。 X/Yの意味も友ちゃんに言われるまでサパリ分からんかったなー。 つーかそもそもこれが正解なんかどうかも分からんが…。 つーか今気付いたけど、ブックカバーのイラスト、めっちゃ答えやん…。 ヤバイでしょこれ…。
あと、これ読んでなんとなく思い出したこと。 『少女革命ウテナ』で、ウテナが死ぬ気で頑張っても、革命出来たのはたった一人の 心だけだったこと。でも、それでも、凄いことなんだと思ったこと。『TLSR』のED。 「一番大切な人 その次に大切な人 そんな風に君の側にいる人 決めつけちゃ ダメだよ」というフレーズ。『NOIR』のアルテナさんのセリフ「愛で人を殺せるなら、 憎しみが人を救うこともあるだろう」まぁそんな感じで… 非常に痛い話でございました。 一作目『クビキリサイクル』は人に勧められるけど、 二作目『クビシメロマンチスト』は勧める度胸はありません…。

クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子7点
突然やって来た「人類最強の請負人」こと哀川潤さんにかっさらわれてしまった 戯言遣いのいーちゃん。うまく騙されて、潤さんの仕事を手伝うハメに。二人は 依頼者であり、潤にとって妹みたいなものである、紫木一姫を、呪われた学園から 救い出すことが出来るのか!?前二作とはまたまた違った雰囲気で送る、 戯言シリーズ第三弾。
今回もいーちゃんはかっこよかったです。見事な戯言遣いぶりでした。そして潤さんもぶっちぎりでかっこよかったです。「ひょっとしてさぁ、論理で全部が説明できるとか思ってない?」「諦めんな見限るなてめぇで勝手に終わらせんな!」「簡単に否定すんな!難解な肯定すんな!」「胸を張れ、背筋を伸ばせ、自分を誇れ、敵に吼えろ俯くな!」いかにも「人類最強」らしい、イイセリフです。しかもそれでいて「あたしじゃ何をいってもどうせ安全圏からの意見にしかなんねーからな」と分かっているところのかっこよさ。まぁなんでしょー、凡人である私がこれらのセリフから紡ぎ出せるセリフは「論理は、今日を終わらせるためにあるのでなく、明日、胸を張る為にある」ということで…弱小球団をずっと応援してきて得た思考ですな。うわ、戯言っぽい(笑。しかし…この辺のセリフから「新庄剛志と鈴木一朗」について小一時間程考えてしまう自分はやはり病気かなと思った。理屈っぽいのは大好きです。それと、なんでか今回いーちゃんのツッコミが全編「三村ツッコミ」だったのがおもろかった。(2002/9)

サイコロジカル 上下二巻 兎吊木垓輔の戯言殺し・曳かれ者の小唄7点
「堕落三昧(マッドデモン)」の異名を持つ斜道卿壱郎の研究施設に捕らわれている玖渚友の かつての「仲間」兎吊木垓輔を救出に向かういーちゃん一行。そこで出くわした、一種感動 すら覚えかねない惨殺死体。そして突如現れた謎の大泥棒。容疑者にされてしまった友を、 いーちゃんは救えるのか!?
これまた新しい雰囲気でした。毎回このシリーズは雰囲気が違う気がします。 が、ちょっと、全体的にバレてーらでした。犯人とかあの人は何者とかその辺が。 最初はなんとなくそう思ってただけなんですが、それらがだんだん確信になっていくにつれ、 「あーあそういうことか…」という気分になっていきました。が、上巻最後の方の 音々さんといーちゃんのやりとりが良かったのでヨシとします。

ヒトクイマジカル5点
「死なない研究」をしているという木賀峰助教授に研究モニターとして雇われた戯言遣いのいーちゃん。 同じアパートに住む女子高生・紫木一姫と、先月、斜道研究所で出会った生物学者・春日井春日と共に 木賀峰研究室へ乗り込む。そこには、「死なない少女」円朽葉と、先日いーちゃん達が出会った 「殺し屋」匂宮兄妹が居た。そこで繰り広げられる殺戮劇!!匂宮兄妹の背後にいる、狐お面の男の 正体とは!?
だるかった。これにつきる。事件が起きた辺くらいでしょうか、面白かったの。 後はひたすらだるかった。「運命」とかその辺の話はジョジョで読み飽きてるってのもあって、 とりあえずだるかった。なんかその場その場ではいろいろ感想あったんだけどなぁ。 一姫ちゃんに関してはあまり多くは語らず。みいこさんとのやりとりがあってもいーちゃんはダメなままで。 友さんは相変わらず無邪気な恐怖を色濃く出しておられ。そして赤い人のオヤジ登場。 『人間試験』の内容から判断するに、どんどん推理モノというよりは格闘モノになっていきそう? うーん、ほんと、いろいろ感想あったんだけど、なんかどうでもいいや。 「戯言シリーズ」として観れば結構ポイントになる話だったんだろうけど、単作で考えると 読んだ時間返せって感じです。ここ二作いーちゃんがカッコ悪いので残念。全然戯言遣いしてねー!! まぁ、相手が人間じゃないしな…。でもクビツリの時はそれでもかっこよかったじゃないか。 あと、もう少しスラッと話まとめてください(笑。(2003/7/21)