読了。
確かにこれはただの野球本ではなかったです。


映画ではあまり突っ込まれていなかったセイバーメトリクスな話も多分に盛り込まれていて、大満足。
DIPSはセイバーメトリクス好きの間でも最初は疑問を呈されていたとかは面白いなぁ。「どの投手も年度別に奪三振、与四球、被本塁打はだいたい安定しているが被安打率はバラツキがある=被安打は(投手から見ると)運である」という結論はそうそう鵜呑みには出来ないですわなぁ。

興味深かったのは後書きの「ベースボール宗教戦争」で本作発売後に古い野球人と一緒に記者クラブまでがこの作品を、ひいてはこの作品の主役の一人であるビリー・ビーンを叩きまくったということ。野球ですら「既得権益」を守るために守旧派と記者クラブが一緒になって新しいモノ(しかも結果も出しているのに)を排除しようとするのだから政治経済では言うまでもないことか。MLB以外のスポーツ、ビジネス界、そして野球が盛んではないイギリスでも大反響だったらしいですが。
因みにこういう時の「潰し方」もだいたい同じなのも面白かった。実際の成功例には目を瞑る、相手の人格を非難する、ひとつの失敗を取り立てて騒ぐ、自分達の考えに近い行動を取るとそれ見たことか言った通りにしたから成功したのだと言うなどなど、全く芸のないことです。

今やこの理論はMLBでは当たり前になり、そこにプラスアルファが無いと勝てなくなっているように思います。アスレチックスは近年低迷。ビリーは推奨していなかった盗塁、犠打を積極的に使うようになっているとか。ビリーが新たな理論を実践し、今度こそ世界一になってくれた時、この物語はホンマに完結するのかしら。俄然アスレチックスを応援したくなる。