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のむさんがプロ野球監督について語っている本で、ひいてはリーダー論に繋がる内容になっています。


監督に必要な要素として信頼、人望、度量、貫禄、威厳、表現力、判断力、決断力を挙げ、それらの観点から星野仙一、西本幸雄、上田利治、古葉竹識、広岡達郎、森祇晶、王貞治、鶴岡一人、三原脩、水原茂、渡辺久信、原辰徳、古田敦也、落合博満ら名だたる監督を論評します。そして上記の要素全てを兼ね備えた名監督は川上哲治であると。この辺だけでもかなり読み応えがありますが、WBCの監督選考の裏側や、今や緻密さでは世界一と言っていい日本プロ野球の礎はアメリカからやってきたブレイザーとスペンサーが築いたというお話なども非常に面白かったです。
そして個人的に着目したいのが、何故今、監督人材不足に陥っているのか、という話。この辺は仲間内でもWBCの監督選考時に話題に上り、その際は「球界がON世代・仙一世代に長年頼りすぎた」という結論に至りましたが、のむさんの論や如何にというところで、「監督の賞味期限が短くなっているので、後継者を育てる時間そのものが無い」という話もさることながら、「コーチより評論家を経験すべき」という論はなかなか興味深いものがありました。著書中ではその理由として「日本の二軍は脆弱過ぎて経験を積むにはおそまつ」であり、それよりも評論家として「外から野球を見る」方がいい、というものですが、これには心から賛同。というのも、どうにも最近の首脳陣の採用の仕方が「引退した選手の天下り先」に成り下がっているように見受けられるからです。「やらしてみたら名コーチだった」ということもあったり現役時代の実績と名コーチ・名監督たるかどうかは別だったりしますが、それを差し引いても「こいつがなんで・・・」ということが最近特に多い気がします。のむさんの言うように首脳陣入りする前に一度評論家をしてもらえれば、その人の野球理論などが分かるし、また、首脳陣入りするために評論家として勉強する必要がある、という土壌が出来上がれば、プロ野球中継でも面白い解説が聴けるようになり、一石二鳥なのではないか、と思いました。そもそも、のむさんが言うように監督講習会が無いのはなんでやろう。サッカーは指導者になるのに資格を取らないといけないのに。
のむさんは監督やコーチら首脳陣の育成にも球団としてのビジョンが必要である、と説いています。最近、ジャイアンツが若手選手の育成にようやく本腰を入れ始めてくれたので、これが球界全体にいい効果を生めばいいなと思っていますが、同時に首脳陣育成にもそろそろ本腰を入れなければならない時が来ているのかもしれません。日本の二軍が勝ち負け度外視の育成の場ではなく、アメリカのマイナーリーグみたいにそれなりに勝敗を求められる(集客力を要求される)ものになれば、また変わってくるのかもしれませんが。